そして、夢中になっていたものとは別に、苦しんで迷ってつくったメール。
 何度も指が止まり、クリック出来なかった、『送信ボタン』。

 その日、目をギュッと閉めて、思い切ってそのボタンをカチッ。と押した。


 「お、押しちゃった……」


 恐る恐る、目を細めながら瞼を開けていく。
 目の前には「お問い合わせありがとうございます」の文字が表示されている。
 虹雫は、その画面を呆然と見つめ、そして両手を握りしめながら祈るように、その場でもう一度目を閉じた。その目からは小さな涙が流れ落ちた。


 その涙を拭ってくれる人は、今はいない。


 虹雫は、2人との約束を破った事に、切なさと悲しみを覚えつつも、「きっとうまくいく」という少しの期待と恐怖を感じ、1人きりでパソコンの画面の前に囚われ続けていた。