「何がおかしい?」
 『それは心配ないと思いますよ。あの女は、宮さんにかなりぞっこんです。宮さんが喜んでくれるのが嬉しくて仕方がないって感じだったので、何が何でも椛さんを起用すると思いますけどね』
 「そう、なのか?」
 『はい。そこらへんは安心していいと思います。が、これ以降は頻繁に会わない方がいいでしょうね』
 「そのつもりだ。慣れ合いすぎると相手も警戒するかもしれないからな」
 『宮さん、逆ですよ逆ッ!ホテルの部屋まで誘われてるんですよ。次、会ったら確実に食われますよ』
 「それは絶対にありえない。どんな事をしてでも回避する。虹雫が悲しむ」
 『本当に恋人さん大切ですよねー。あ、お試しでしたっけ?』
 「……おまえに対しては秘密って言葉の意味はないな」
 『褒め言葉ありがとうございますー』


 終始ニヤニヤしている蜥蜴との通話に疲れ、宮はその後すぐに電話を切った。
 そして、腕にある腕時計を見つめ、使わない時は部屋のクローゼットの奥底にしまっておこうと心に決めたのだった。




 それからすぐに、剣杜が所属する事務所に、映画のオファーが来ることになる。
 剣杜はもちろんすぐにその仕事を承諾する事になり、スタッフやマネージャーからも驚かれることになった。
 
 それが世の中に明かされるのはまだ先に事だが、いずれは剣杜がその映画に出演すると公表されるのだろう。

 そうなれば、秘密にすることは出来ないのだ。
 虹雫がしればどうなるのか。

 それが1番の悩みの種だった。