けれど、そんな時間は長くは続かない。
 虹雫を自宅まで送った後、スマホの開き、ロックを解除する。
 そのスマホには、3人がお揃いの三角のストラップはついていなかった。「仕事用だよ」と、2人には説明していたが、実は違っていた。それは、蜥蜴から渡されたものだった。何でも「このスマホはセキュリティーがかなり厳しくなってて、絶対に侵入されたりしないもの」らしい。蜥蜴は依頼をこなすときは、依頼主にこういったお手製のスマホを渡すことにしているらしい。何でも、「自分を守るため」らしい。どんな人間と繋がっていたのかを知らせたくないのだと言う。それもそうだろう。裏の世界で生きる人間なのだから。

 その蜥蜴のスマホが、点滅して何かの通知があった事を知らせていたのだ。
 そこの連絡してくる人間は蜥蜴しかいない。


 『例の副社長とデータが揃いました。添付しますので確認してください』

 短いメッセージと共にファイルが添付されていた。
 宮は、それをタップしてファイルの中身を確認する。

 「いよいよだな。ここまで来たら後戻りはできない。するつもりもないけどな」

 と、添付された資料を見つめながら、車内でそう呟き、しばらくの間、作戦を練って過ごしたのだった。その時間は、学生の頃の試験前の気持ちと似ている、と何故か思った。