11話「些細な幸せを」




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 「虹雫は、自分がどんな風に思われてるか、本当にわかっていないね。……いろんな事に気づくのに、自分には自信がないからだろうけれど」

 まだ起きるには早い時間。
 やっと朝日が顔を出したが薄暗い時間。光りで少し透けたカーテン。そこからの淡い輝きで虹雫の寝顔がよく見えるようになった。彼女は気持ち良さそうに寝ている。自分の腕の中で安心しきった表情で、体を寄せてくる姿は本当に可愛い。そんな彼女を悩ませていたと思うと、心が痛む。
 けれど、これでいいのだ、とも強く思う。宮は、虹雫の頬に手を伸ばし、触れる直前でその手を止めた。こうやって触れてしまうのは簡単なのだ。虹雫を求め、彼女が求めてくれるように、虹雫を抱いてしまうことも同じだ。本当に自分の恋人にして、抱きしめ合えば、虹雫は安心してくれるのだろう。喜んでくれるのかもしれない。
 けれど、それは今ではない。
 今、虹雫を自分のものにしてしまば、宮の決心が鈍ってしまう。幸せに浸り、やろうとして決めた事をずるずるとやらずに終わらせてしまうのではないか。決してそんな事はないだろうが、悩み決心が鈍ってしまいそうなのだ。

 それに責任は負わなければいけない。
 自分がどうなろうとも、虹雫を助けたい。そう思うのだ。

 それが、彼女を悲しませることになったとしても。