虹雫の言葉を聞いて微笑んだ宮は、ゆっくり虹雫に近づき、前髪に触れた。
 そして、優しく髪を指でとかしたと思うと、額に小さなキスを落とした。


 「宮………」
 「さ、お風呂をどうぞ。待ってるよ」
 「うん」


 虹雫は、準備をした後に脱衣所まで向かった。
 この時に宮は心の中で「我慢だな」と呟いていた事に虹雫は気づくわけはない。

 
 大きなベットで2人でくっついて眠る。
 大人になり、宮の事が好きだと自覚してから、彼と一緒に眠るなど想像出来ただろうか。
 2人でベットに入り宮に抱きしめられて、彼の胸の中に自分の体が収まる。初めは緊張のあまり体が硬直してしまっていたが、彼が頭を撫でてくれたり、ゆったりとした呼吸と鼓動が聞こえてくると、安心してしまう。
 宮は好きな人であり、幼馴染であるんだ、と改めて実感した。


 「宮、好きだよ」


 彼の寝息が聞こえたと思い、幸せのあまりそんな言葉が自然ともれた。
 あまりにも小さい声。それなのに、夜の静けさの中では大きく感じられる。
 けれど、宮は起きないだろう。そう思って、自分だけの秘密にしようとした。

 が、それは違った。
 彼の腕の力が強くなり、グイッ頭を押され顔が彼の胸に密着する。
 突然の事に驚き、虹雫は小さく彼の名前を呼んだ。


 「俺も、虹雫が好きだよ」


 耳元で聞こえる、吐息混じりの声。
 大好きな男の人の夜の声。それを聞いて鼓動が早くならないわけがなかった。
 
 虹雫の緊張はすぐにおさまり、安心して眠る事が出来たのだった。