先程ポロリと言ってしまった事柄を、剣杜が口にしてしまったのだ。剣杜を睨みつつも、宮の反応が見れずに恥ずかしくなってしまう。
 視線を下に向けたまま、「それは冗談だから、気にしないで……というか………」と口ごもっていると宮は「虹雫」と、いつものように穏やかな口調で虹雫の名前を呼んだ。


 「何回も来てくれてる、………あぁ、そういう事か」
 「ごめん、直接言えなくて……」
 「気にしてたなんて、気づかなくてごめんね」
 「宮は謝らなくてもいいの。理由もわかっているし」
 「じゃあ、今日行こうか」
 「宮、お酒飲んだでしょ?」
 「宮は飲んでない。俺だけが寂しく飲んでるんだ」
 「明日、仕事があって早くてね。遅くなっても家に帰りたかったから飲んでなかったんだ」
 「じゃあ、私もお邪魔するわけには」
 「送るつもりだったんだ。いいよ」


 宮は虹雫の頭をポンポンと撫でる。
 それだけでいつも安心してしまう。自然とストラップを握りしめる手も力が抜けてくる。


 「よかったなー」
 「もう、剣杜ったら………」


 酒の入ったグラスを片手で持ち、ニヤニヤしながらそう言う彼に、虹雫は呆れ、怒りながらも心の中では感謝してしまったのだった。