そんな剣杜をちらりを見つめる。
 本屋で体調が悪くなった原因。それを彼は気づいただろうか。長い付き合いだ。それに剣杜は過去を知っている。だからこそ、わかってしまったのではないか、と思っていた。そして、それを宮に話したのではないかとも。
 2人はいつもと同じように話、食事をしながら楽しそうにしている。そんな姿を見ていると、剣杜は気づかなかったのかもしれない、とも思った。それならば、1番いい事なのだ。

 忘れよう。なかったことにしよう。
 そう言ってお願いをした本人がいつまでも忘れられないなんて、いけないことなのだから。
 気づくと2人には隠れてスマホの三角のストラップを握りしめていた。


 「虹雫?どうしたの?」
 「え………」
 「おまえ、まさか酒飲んだのか?だから、飲まない方がいいって言っただろ?」
 「の、飲んでないよ!今日はさすがに止めておいたよ」

 
 考え事をしてしまっていた虹雫は、2人の視線と言葉に気づきハッとした。なるべく、平然な雰囲気で返事をすると、剣杜も宮も笑うだけだったので、ホッとした。


 「あ、そうだ。その間、見たいって言ってい本、帰りに俺の家に行って貸そうと思って。新刊も読み終わったから、どっちも貸すよ」
 「おー、よかったな。宮の家にいけるな」
 「け、剣杜!?」
 「え?何の話?」
 「宮の家に行きたかったんだと」
 「剣杜ー……」