彼がもう1人の幼馴染、遊馬宮。彼は頭脳明晰で小さな頃から天才と呼ばれており学年トップは当たり前で、「開校以来の秀才だ」と入学する度に言われていた。温厚な性格と優しさで、女の子からモテていた。クールで物静かで、一緒に居ると落ち着く。そんな存在だった。


 「宮、ごめんなさい。私が遅くなっちゃったの」
 「いいよ。気にしないで」
 「お、珍しいな。宮がスーツなんて」
 「俺だって忙しいんだよ。そんな事より、虹雫。体調悪いのか?」


 虹雫が、宮と呼ばれた男の隣に座る。と、宮は虹雫の額に手を置いて心配そうに顔色を窺ってくる。どうしてこうも、幼馴染2人は心配性なのだろうか。虹雫は微笑みながら「大丈夫だよ。元気だから」と、彼に言うがまだ納得はしていないようだった。


 「疲れてるんだと」
 「そうか。……無理はしないで」
 「うん。ありがとう。でも、本当に大丈夫だから、ね?」


 虹雫がそう言って、立ち上がり店員を呼ぶ。
 今日はコース料理をお願いしていたので、順番に料理が並べられ、グラスには赤ワインが注がれる。普段は居酒屋か落ち着いたレストラン、それか3人のうち誰かの家で食事をするが、今日は少し奮発をして高級料理店を予約していた。宮と剣杜にとっては安い店かもしれないが、虹雫には中々敷居が高い場所だったのでとても楽しみにしていた。大きなワイン用のグラスを見つめては気持ちが浮ついてくる。


 「おまえが1番嬉しそうだな」
 「だって、おいしそうだっらから。でも、今日の主役は剣杜だからね。じゃあ、グラスを持って」
 「はいはい」
 「剣杜、雑誌の表紙、そして、one sinの専属モデル決定、おめでとう!」
 「おめでとう」
 「ありがとう!わざわざ祝ってくれて悪いな」