そんな昔話を懐かしく話しているうちに、窓の外の景色が変わっていた。高いビルは少なくなり、落ち着いた住宅街や商店街などが見えてきた。虹雫にとって、そこは見慣れた場所だった。


 「子どもの頃の話になって、タイミングがよかったね」
 「私たちの地元だよね。どうして急に戻ってきたの?」


 そう。この少し古びた町は、虹雫と宮、そして剣杜の地元であった。
 都会すぎず、田舎すぎない町。もう少し車を走らせれば田園風景になり山や川もある。けれども栄えた街までも車で40分もかからない場所。とても住みやすく、雰囲気のある街並みが虹雫は大好きだった。
 けれど、どうして宮が急にここに戻ってきたのかはよくわからなかった。虹雫の質問に、「着いてからのお楽しみ」と、まだ教えてくれる様子はなかった。


 それが5分ほど車を走らせた後、ひっそりとした雰囲気のある場所で車は止まった。
 住宅街の中でも木々が多い場所で、そこには長い階段がある。そして、その場所に入口には鳥居がある。鳥居といえば赤いイメージだが、そこは真っ白なのだ。夜にみると、それが朧気に光っているように感じらるから不思議だ。


 「ここって、私たちがよく遊んでい白狐様の神社じゃ……」
 「そうだよ。じゃあ、行こうか」

 
 宮は、車から食べ物が入った袋や他にも大きなバックを取り出すと、そう言ってすたすたの鳥居へ向かって歩き始めた。虹雫は「私も持つ」と言うと、「じゃあ、俺のバック持って」と、一番軽い彼のバックを渡されてしまった。
 長い階段をゆっくりと歩く。子どもの頃は駆け上っていたのに、大人だと疲れてしまうから不思議だ。運動不足かなっと思い
しまう。

 「虹雫、この神社には何があった?」
 「白狐様と、あ、もしかして……」
 「わかった?そう、春になると見事に咲く桜の大木」
 「お花見!?」
 「正解」