「車乗って。夕飯食べに行かないか?」
 「行きたい。お腹ペコペコなんだー」
 「そうか。じゃあ、たくさん食べれるところがいいな」
 「んー。宮、ずっと前に3人で言ったとんかつ屋さん気に入ってなかった?そこ行く?」
 「え、そんな所でいいのか……?」
 「いいけど。ダメだった?」
 「いや、おまえらしくていいな。じゃあ、そこにしようか」


 宮は楽しそうに笑った後、宮が乗る助手席を開けてくれる。
 こういう気づかいをスマートに出来る彼が、モテないはずがないのにどうして恋人がいないんのだろうか。やはり、話をしてくれないだけで、いるのだろうか。
 けれど、今はこうやって2人きりの時間を作ってくれている。やはり、彼女はいないのだろうか。
 そんな事をぐるぐると考えているうちに、虹雫はハッとした。
 これがデートだとしたら、自分は今彼にとんかつ屋に行きたいと行ったのだ。色気も雰囲気もない、とんかつ屋を選んだのだ。
 だから、宮に笑われたのか。やっとその事に気付き、虹雫はこっそり顔を赤くさせた。
宮が運転中でしかも辺りは暗くなっていた事に感謝をしたのだった。



 「昨日は、ありがとう。飲みものとかデザートとか。朝御飯にいただきました」
 「いや……それぐらいはいいさ。体調は、もういいの?」
 「うん、ありがとう。お陰さまで元気です」


 食事しながら、虹雫は昨日を俺を伝えた。
 朝起きると、テーブルの上にはビニール袋に入った食べ物などが置いてあった。昨日、虹雫が寝てしまった後にきっと宮が届けてくれたのだろう。それが嬉しかったことを伝えると彼は少し困り顔になった。不思議に思いつつも少し照れてるのかな、と気には留めなかった。


 「そう言えばね、2人に相談した絵本の読み聞せ会の事なんだけど。上司に相談したら、案を受け入れてくれて、みんなにも褒められたよ。やっぱり気になったことは伝えてみるものだね。ありがとう、本当に助かった!」
 「………そうか。よかったな」