その後は、宮の車で指定された場所に向かう。そこには大勢のキャストやスタッフ達が集まっていた。
 虹雫は沢山の人々に歓迎され、作品が戻って来た事を祝い、そして何の疑問を持たずに作品を大きくしてしまった事を謝罪してくれた。盗作をした作品だとわかるはずもないのだから、仕方がないと思いつつも虹雫の事を心配してくれる人が多いので、安心してしまう。


 「虹雫、宮!」
 「あ、剣……じゃなかった、椛。それに一条さんも」


 会場で2人の名前を呼び駆け寄ってきたのは、剣杜と一条だった。
 剣杜は「別に椛なんて呼ばなくていいって。おまえらにその名前で呼ばれるの、なんか変な感じするし」といいながら笑っていたが、隣にいる一条は苦い顔をしていた。


 「一条さん。今回は沢山のご迷惑をお掛けしてしまい、すみませんでした。騒ぎになってしまった事お詫びいたします」
 「虹雫さんが謝る事ではないのよ。私たちが調べもせずに出版してしまったのが悪いのだから。騒ぎを大きくしてしまったのも私たちの責任。あなたが怖く苦しい思いをしたのだから、私たちの方こそ何度も謝罪をしなければいけないのよ。本当に申し訳ないです。その代わりに、映画は自信作になっているわ。一生懸命作ったから、喜んでもらえると思ってます」
 「ありがとうございます。とっても楽しみにしています」


 一条は何度も頭を下げながら話をしてくれる。彼女は会う度に謝罪の言葉をもらす。