裏社会に生きる人。
 怖い雰囲気とは打って変わって、明るい口調でニコニコと笑う蜥蜴は人懐っこささえもある。
 それが逆に怖いと感じてしまうから不思議だ。そんな虹雫の気持ちを知ってか知らないふりをしているのか。蜥蜴はトコトコと虹雫に軽い歩調で近づいてくる。


 「実は、虹雫さんにプレゼントがありまして」
 「プ、プレゼントですか?」
 「はい。手出してー?」
 「え、あ、はい」


 突然の事に恐る恐る、蜥蜴の方へと手のひらを伸ばす。
 そこにポトンッと落ちてきたのは、冷たい小さな金属。どこかの鍵だった。


 「これは?」
 「それ、宮さんのうちの鍵。合鍵貰ってたんだー。いいでしょ?」
 「あ、合鍵!?」
 「嘘うそ。ビックリた?俺が勝手に合鍵作っただけー」
 「そっちの方がビックリしますけど……」


 法外の事をやすやすと行える事や、それを悪びれる事もない態度に驚き続けていると途中から呆れるしかないのか、と虹雫は苦笑しか出来なかった。


 「そろそろ、宮さん戻ってくると思うから、おいしい手料理作って待ってたら、きっと喜んでくれると思いますよー。ね、いい作戦でしょ?」
 「み、宮が戻ってくるんですか!?」
 「うん、よかったね。虹雫さん、大好きだもんね。早く会えるといいですね」
 「………はい。でも、どうして、私のところに来てくれたんですか?」
 「僕と宮さんの契約はおしまいだからね。最後に、宮さんにサプライズしたくて。きっとあの人が貰って嬉しいのは虹雫さんだからね。僕のプレゼントになって欲しくて。お願いしていい?」
 「蜥蜴さん、もう宮とは会わないんですか?」
 「うん。だって僕と君たちは住む世界が違いますから。あんまり近くに居すぎると、君たちに迷惑がかかっちゃう。闇の世界ってそうところだから。虹雫さんは来ちゃダメですよー」