36話「忘れない愛しさ」





 宮が澁澤と会い、そのまま目の前からいなくなってから3日が経った。
 仕事が終わり、図書館から出てきたら車を停めて宮が待っていてくれるかもしれない。そう思って扉を開けては悲しくなる事が3回も続いていた。
 その間、警察が話を聞きに来る事はあったが、宮については「ただいま捜査中なので」と、詳しくは教えてくれなかった。虹雫の話を聞いてくる警察官は、朽木という男性だった。細いフレームを掛けたつり目の男で、口調も態度も真面目だが、尋問されているような気分にさせる口調で怖いなと思ってしまう。高校生の時の話も「すぐに警察に連絡していただければよかったものを」と怒られてしまい、申し訳ない思いもあったが、悲しさも感じた。脅された時の怖さと苦しみに共感もしてくれずに、話も丁寧に聞かずに説教をしてくる。
 こんな人と宮は話をしているのだろうか。そう思うと不安が募るばかりだった。



 そんな3日目の夜。

 何度目になるかわからないため息をついていつもの帰り道を歩く。
 と、自分の部屋の近くに差し掛かると扉の前に誰かが立っているのに気づいた。一瞬、宮だと思ってしまったが、すぐにそれは違うをわかる。彼よりも小柄で若い男性だった。黒いフード付きのジャンバーに黒いズボンという黒ずくめの恰好に少しゾワリとしてしまうが、すぐにある事に気付く。


 「……もしかして、蜥蜴さん、ですか?」
 「正解ー!すごいですね、僕は虹雫さんの事は何度か見てますけど、あなたは初対面なのに。女の勘って奴ですか?」
 「え、えぇ、……そんなところです」