宮の深い愛情。

 虹雫には話さないで、コツコツと澁澤から小説を奪い返す手段を探し、そして虹雫に夢を叶えさせてやりたいと願っていたのだろう。
 その気持ちに、虹雫は途中から涙がボロボロと零れ止まらなくなっていた。

 どうして宮の気持ちに気付けなかったのだろう。
 宮のやっている事を気づけなかったのか。

 幼馴染だから、すぐに違いに気付ける。そんな事を言ってしまったが、そんなのは嘘だ。
 宮の事をなのもわかっていなかった。
 それなのに、宮の事が好きだと言っていた。


 「わたし、何もわかってなかった。宮の本当の優しさにも、大切に守られていた事にも。愛されていた事にも。ねぇ、剣杜。私、宮に会いたい。今、宮に会って言いたい事沢山あるよ」
 「あぁ、俺だって沢山言いってやりたいことがある。自分だけ全て背負うなんてかっこつけやがって。むかつくからな」
 「すぐ、帰ってくるよね?」
 「あぁ、虹雫を置いてあいつが戻ってこないはずないだろ。帰ってきたら、沢山泣きついてあいつを困らせてやれ」
 「うん。いっぱい泣いて、宮にありがとうとバカッ!と、大好きだって伝える」


 目や頬にたまった涙を拭きとりながら、虹雫は小さく笑う。
 まだ上手く笑えないのは、宮に会えていないからだろう。
 彼が帰ってきたら、泣きながら笑おう。それが、今の虹雫の本当の気持ちを表しているのだから。