強張った表情のまま剣杜に詰め寄り、虹雫は彼から言葉を待つしかなかった。


 「違法な手順で澁澤を調べていたんだ。だから、事情を聞くらしい。だから、宮から連絡が来てたんだ。俺は虹雫を迎えにいけないから、代わりに迎えに行ってやって欲しいって」
 「そんな………」
 「虹雫、大丈夫。あいつは戻ってくるさ。おまえを置いて長い間いなくなる事なんてなかっただろう?」
 「そう、だけど」
 「その間、宮と俺が何をしてきたか。今日、何が起こったのか話すよ。聞いてくれるか?」


 虹雫がお願いしたいぐらいだったが、何故か剣杜が懇願するようにそう言う。
 大切な幼馴染で、自分の作品を救ってくれた恩人の切ない表情に、虹雫も同じような悲痛な顔を見せてゆっくりと頷いたのだった。





 剣杜の家に移動をし、長い話になるからと軽く夕食を食べて話に臨むことになった。
 
 いざ、剣杜が話を始めると、本当に長い時間がかかった。
 それほどに宮と剣杜は、澁澤から小説を奪い返すために長い時間と労力をかけてくれれたのがわかった。
 その間、自分は何をやっていただろうか?自分の恋愛や夢の事ばかり考えていたのだなと思い返し恥ずかしなってしまう。