「椛さんに薬入れておくって言ってなかったんですか?」
 「騙すならまずは味方からって言うだろ?」
 「………怒らすと怖い人だな」
 「いいだろ?この男から守ったことになるんだなら」


 蜥蜴は「確かにそうっすねー」とニヤニヤと笑っていた。
 今ごろはお楽しみの時間だったはずの澁澤だが、この手足を縛られた状態は椛の作戦だった。そんな話を聞かされて、澁澤は更に体を強ばらせた。
 

 「こんな事をして、何が目的だっ!?金か?」
 「……金なんかいらない。おまえが持っている金なんて全部汚れてるんだ」
 「な、何を言って……」
 「こんなことをされる理由、本当にわからないのか?」
 「……何を言ってるんだ?わかるはずないだろ?」
 「なるほど……よっぽど物忘れが激し
いんだな」

 そういうと、宮はジャケットに手を入れた。
 そこから手を抜いた瞬間、澁澤なナイフなどの傷つける物を想像したのだろう。小さく「ヒッ……」と汚い悲鳴を上げた、が宮が取り出したのは蜥蜴から預かっていたスマホだった。

 そして、画面を開くとおもむろに澁澤の方にスマホの裏側を向け、ボタンをタップし部屋に響いたのはシャッター音。澁澤は唖然とした表情で一瞬動きを止めたが、その後はたて続けにシャッターを押し続ける宮に「や、やめてくれッ!」と、顔を歪めて訴えたが、宮は無言で写真を撮り続けた。


 「これを名前付きでネットにバラまくか週刊誌に送りつける」
 「ッ!?ま、まさか、おまえらは………」
 「やっと気づいたか」


 宮はそういうとスマホをポケットにしまって、大きくため息をついた。
 そして、持っていたカバンから数枚の写真を取り出した。