34話「終わりと責任」





 剣杜は随分お酒を飲んでいた。
 上機嫌でいなければいけなかったし、もしそういう事になっても、酔っていて殴ってしまったとも言い訳でも言えばいいと思っていたのだ。逆に、澁澤はあまり酒には口をつけなかった。警戒していたのか、それとも次に行われる事情のためなのか。剣杜は後者だと思っていた。

 が、今となってはどうでもいいことだった。
 剣杜はしばらくの間、熟睡していた。
 ワイン汚れのない綺麗なベットで。

 そして、目覚めた時には、全て終わっていたのだった。

 剣杜のスマホが何度も鳴っていたのに、彼が気づくのは随分先だった。










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 こんな間抜けな男をずっと追っていたのか。
 バスローブ姿で腕と足を縛られた男を、冷静に見つめた。今すぐにでも殴って叩き起こしてやりたかった。
 が、それで何もしゃべらなくなっては困る。

 宮は、ワインで赤く汚れたベットに近づき、もっていたペットボトルの水を澁澤の頭にかけた。


 「ん………なっ、なんだ………これはっ!?」


 水をかけられた澁澤はゆっくりと目を開けた。そして、自分が体を拘束されている事に気づき、目を開いて驚き、周りを見て顔を一気に真っ青にした。
 見ず知らずの男2人に囲まれ、しかも1人の男の視線は鋭く刺すように冷たい。恐怖を感じて、体を激しく動かすが、縄が緩むことはない。


 「澁澤悠陽、初めまして」
 「お前達は何者なんだ!?それに、椛くんをどこに置いた」
 「……人の心配なんてしている暇なんてあるんですか?自分が拘束されているのに。……あぁ、それにアイツは俺達の仲間ですのでご安心を。一緒に寝てもらいましたが」


 温度のない低い声でそう告げる宮の顔には笑みなどは一切ない。が、宮の隣にいる若い男は楽しそうに笑っている。