「私に何かサプライズする………つもりなのかなって思ってたけど…………、違うんだ、ね……」
「………ごめん。内緒にしてて……忘れる、なんて事ができなくて………虹雫……?」
「ん……な、……に……」
先程から、ポツポツと通信が悪い動画音声のように声が途切れていたが、どうやら虹雫の眠気が限界のようだ。
ベットで横になった虹雫を一緒に寝ながら虹雫を頭を撫でているうちに、瞼が閉じていき、ただただ言葉を発しているようだった。
「おやすみ、虹雫」
宮はそういうと、虹雫の頬にキスを落とした。そして、「愛してるよ」と、抱きしめた。
お試しの恋人とは全く違う雰囲気に、幸せを感じる。胸がいっぱいになるとは、こういう事なのだろう、と宮は初めて知った。このまま一緒に寝てしまえば、幸せを感じられるのだろう。恋人になれた実感を噛みしめて夜を過ごせるのかもしれない。
けれど、今はやる事がある。
完全に虹雫が熟睡したのを見た後に、宮は彼女を起こさないようにゆっくりとベットから抜け出した。
虹雫の部屋から出てドアをしっかり閉めて、玄関の方へと向かう。
そこの床にはちらばった写真がそのままになって置かれている。宮は手に取るのを躊躇ったが、虹雫が朝起きてこの写真を見る事を考えるとそのままにしておくわけにはいかない。苦しさを感じながら、写真を1枚1枚集めていく。宮は途中で目に入るのも嫌になったが、それを目に焼き付けておかないといけない、そう思い過去にあった現実から目を逸らさないようにした。もう2度と彼女にこんな思いをさせないように、自分が守り切らなければいけない。2回もあの男に虹雫を傷つけさせることを許してしまったのだ。
もうそんな事はさせるわけにはないのだ。