「恋人、やっぱりいるのかな。どうしよう。結婚するって言われたら、笑顔で「おめでとう」って言えるかな……」
 「ありもしない事を考えて泣くな。それに、宮が恋人出来たら俺達に報告するだろう?」
 「そう、だけど……」
 「余計な事考えないで今は寝ろ。体調戻すことが優先だ」
 「うん、ごめんね……」


 「鍵は今度返す」と剣杜は言うと部屋のカーテンを閉め、電気を消して部屋を出て行った。
 虹雫は傍に置いてあったスマホを取り出し、宮と剣杜に「いつもごめんね。ありがとう」とメッセージを残してからスマホの電源を切った。そうでないと返事が気になって寝れないのはわかっていたからだ。
 そして、スマホを枕元に置こうとした時に、先程貰ったばかりの三角のストラップが目に留まった。


 「宮は本当に優しいな。私の考えている事、全部わかっちゃうんだもん。それなのに、どうして、好きだって気持ちは気づかないのかな。本当に、優しすぎて辛いな……」


 わかっている。
 彼がどうして何も言ってくれないのかを。
 私を傷つけるからだ、と。気づかないふりをして幼馴染として過ごす事が1番幸せなのだと、わかっているから。虹雫のためにも、宮のためにも。


 「でも、そろそろ諦め時かな……」


 泣きそうになりそうな瞳をぎゅっと瞑り、虹雫はベットの中で丸くなった。
 こういう時は寝てしまうに限る。
 けれど、どうしても寂しくなってしまいスマホを手に取り、三角のストラップを握りしめた。
 こうすればきっとあの夢は見ない。2人が出てくる楽しい夢になるはずだ。
 そう信じて、虹雫はゆっくりと夢の中へ落ちていった。