29話「苛立ちの訳」




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 宮は必死に動いていた。
 無我夢中で蜥蜴と共に澁澤の事を重点的に調べ始めた。


 「宮さん、ちょっと休んだ方がいいですよー。あれからほとんど寝ないで過ごしてるじゃないですか」
 「いや………もう少し監視カメラをあらってみる。あと投稿サイトの掲示板にも書き込みしたやつのことも調べないと」
 「それは俺がやった方が早いですって」


 この日、宮と蜥蜴はとあるビジネスホテルの一室にいた。
 お互いにPCをひらき、カタカタと作業をしていた。蜥蜴は少し前からベットに横になり宮に休むように声を掛けてくる。だが、宮はそれを無視して作業をしている。もう数日前からずっと盗作事件の事を追っている。


 「やれることはやってますよ。あとは、あいつが自白しないとダメですって」


 そんな事はわかっている。
 もうやれることはすべて確認し、証拠はあるはずだ。


 「もうネットで暴露しちゃった方が早いと思いますけどね。それか、週刊紙に売るとか。いいお金になりますよー」
 「……それを見て怒った犯人が写真をネットにあげたらどうするんだ」
 「それがあるってことは、やったって事実になるじゃないですかー。証拠の品になりますよ」
 「………蜥蜴、これ以上言ったら怒るぞ」
 

 低い声で宮が彼を睨みながらそういうと、蜥蜴は肩を竦めてわざと怖がる様子を見せた後は、もう何も言わなくなった。その代わり、ずっと根を詰めすぎたのかそのまま体をベットに沈めてしまう。