「大丈夫か?」
 「うん。ちょっとめまいがあっただけだから。寝れば治ると思う」
 「わかった。もう少しで宮が来ると思うけど。寝ているか?」
 「うん…………。ねぇ、剣杜」
 「なんだ?」
 「やっぱり宮は私の事、面倒な女だって思ってるのかな………」


 こんな弱音なんて吐きたくなかった。
 こんな事を言っても「違う」と言って貰いたいだけじゃないか。自分の甘さに、悔しくなってくる。案の定、剣杜は「違うだろ。そうだったら、あんなお揃いのプレゼントなんて渡さないって」と、虹雫を安心させるような言葉を言ってくれる。それを言われても惨めになるだけなにの。
 虹雫は剣杜に、誰が好きなのか話している。というか、剣杜にすぐにバレてしまっていた。大学の卒業の頃に「あいつにいつまで黙ってるんだよ?いいのか?」と言われてしまったのだ。それから、時々こうやって相談してしまう。本当に時々だけれど。


 「どうして私の部屋に入るのは嫌がるんだろう。全然来てくれないんだもん……」
 「それは、俺にもわからないけど」

 剣杜は宅飲みでも、虹雫の部屋に入るのを渋っていた。いつも、「俺の家の方が防音あるし、うるさくなってもいいだろ」と言って、虹雫の部屋に決まりそうになると、そう言って自分の家をすすめるのだ。