今、映画に制作が始まろうとしたばかりだ。今その話が出て問題になれば、今までの準備や努力が全て水の泡になってしまう。あの女に邪魔をされるわけにはいかない。
 もう少しで自分の地位が確約され、これからの栄光が約束されているのだ。


 これ以上、女に動かれるのはまずい。
 ならば、また同じような恐怖を与えなければいけない。
 
 自分にはあの女の弱みを握っている。最終的にはそれをネットにバラまいてしまえば、その女の人生も終わるのだ。



 そんな風に作戦をねっていると、担当のスタッフが慌てた様子で打ち合わせ室に入ってくる。
 いつもは笑みを見せる女だが、この日は表情が強張っている。
 あぁ、こいつも盗作メールと小説を読んで、自分を疑っているのだ、と理解した。
 先程の妙な雰囲気もその女の小説が与えたものなのだろう。これ以上、出版社の人間に疑われたままでいるわけにはいかない。早急に対処する必要がある。

 澁澤は怒りに震える手を握りしめながら、脳内でどう女に恐怖を感じさせようか。そんな、それを考える時は普段は感じられない楽しささえ感じてしまう。快楽にも似た味わいだ。
 自分の邪魔をする人間が恐怖を感じ、泣きながら謝罪をする姿を想像しながら、澁澤はその作戦をじっくりと遊び方を選ぶように考え始めた。