「あー、虹雫だけがお揃いじゃなくて仲間外れになるのか。残念だな。ってか、おまえが受け取らなかったら、俺と宮のお揃いになるって事かよ!?」
 「ずるい、2人だけお揃いなんて」
 「じゃあ、どうする?」
 「欲しい、です」
 「はい。どうぞ」



 申し訳ない思いでゆっくりと手を差し出すと、ポンッと小ぶりの紙袋が置かれる。
 虹雫は、嬉しさが我慢出来ずについ口元が緩む。


 「剣杜はいいの?お祝いなのに、私まで貰っちゃって。宮も、こんな素敵なもの」
 「何で?3人一緒の方がいいだろ?それに、宮にとってはこれぐらいポンッと買えちゃうもんな」
 「俺も3人一緒の方がいい」
 「私も一緒がいい………。あ、ありがとう、宮。大切にする。one sinモデルの記念になるね」
 

 虹雫と剣杜もさっそくスマホに着けて、3人でお揃いにした。本当ならばそれを写真に撮りたかったが、3人のスマホについているため撮影出来ない。それで笑い合った。宮が「今度、仕事用のスマホ持ってくる」と言ってくれたので、虹雫はそれをスマホの待ち受けに使用と決めた。

 やはりあの日の事を忘れてよかったのだ。
 虹雫は、金色の三角に優しく触れながながら、忘れたあの記憶を思い出しそうになり、ハッとした。が、気持ちはズンッと重くなる。

 忘れたくても忘れるはずがない。
 忘れたい事ほど鮮明に記憶される人間の不合理さに腹立たしさを覚えるほどだ。


 「本当に嬉しいな」


 その言葉は心の底からでるものなのなのに、虹雫の心は、ここにあらずの状況にあったのだった。