「そう言っていただけて光栄です。ずっと考えていたものなので」
 「では、受けていただけるという事でいいのかしら?」
 「…………盗作の件も調べていただけますか?」
 「………それは」


 意を決して伝えた言葉。
 今日は出版の話よりも、この盗作について話がしたかったのだ。盗作について問い合わせをしたメールアドレスと同じもので小説を送っていたし、盗作が自分の作品だと認めて欲しいから小説を書き上げたのだ。きっと言葉選びや文章の癖、雰囲気などで気づいてもらえるだろう。そう思っていた。
 だからこそ、ここに呼ばれた。そう思っていた。

 が、虹雫が言葉を伝えると、先程まで自信満々な表情だった一条の顔が曇った。
 それを見て、虹雫はすぐにわかった。盗作事件については、いい返事がもらえないのだ、と。


 「………ごめんなさい。『夏は冬に会いたくなる』については、私たちではわからないの。投稿サイトで見たことがあるというスタッフも数人いたのだけれど、それが澁澤さんのものなのか、虹雫さんのものなのか判断がつかないんです」
 「……ですが。澁澤さんは昔から本を出版されているのに、わざわざ投稿サイトに載せていた理由がわかりません。それに、あの人の今までの文章と『夏は冬に会いたくなる』は全く雰囲気も書き方も違うではないですか?」