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 「で、顔合わせはどうだった?」
 『無事に終わったよ。あ、澁澤って奴のサインも貰った』
 「………剣杜、何しに行ったんだ……」


 電話口から気の抜けた言葉が聞こえ、宮はため息を混ざりの声を落とした。
 今日は、剣杜が初めて澁澤に会う日だったため、宮は心配していた。
 彼は誰とでもすぐに仲良くなれるので、大丈夫だとは思っていたが、サインをもらうほど距離を詰めたとは思わなかった。何をやっているんだ、とも思ったが彼なりの作戦なのだろう。


 『仕事はしてきたし、初回の現場に顔を出す事も了解を得てきたよ。もちろん、澁澤と話す約束もしてきた』
 「初めてでそこまで詰めてきたのか。……すごいな」
 『俺が本気出せばこんなもんだ』
 「けど、おまえ気をつけろよ。急がなくていい」
 『やれる事はやっておくさ。これで映画に出れなくなっても俺は後悔しないし。むしろ、こんな映画に出たいとも思わない』
 「けど、前に話しただろう。あいつは………」


 宮が言葉を濁すが、剣杜は『覚えてるさ。大丈夫だ』と笑うだけだった。
 

 『もし澁澤が近づいてきそうだったら、その時は誘いに乗るつもりだ。そして、PCのデータを拝借すればいいんだろう?』
 「あぁ。前に渡したバックアップ用のUSBをPCにさせば勝手にやってくれる」
 『了解。必ず、成功させてみせるさ』
 「………無理はするなよ」
 『何だよ。宮がこの作戦を俺にやってこいって言ったんだろ』
 「そうだが………」