甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


私達事務は、営業さんがとってきた顧客のデータを貰い、日時、受診人数、実施する健診の種類を確認し、必要機材と人員を手配するのが主な仕事。

それ以外に、こうして出張健診に看護科や検査科の方たちと一緒に現場に出て、会場の設営や、資格がなくても手伝える検査を担当する。

身長や体重、腹囲を測ったり、視力検査や受診者さんへの導線案内など。

間宮さんの言っているマーゲン介助もそのひとつ。
技師さんに代わってバリウムを作ったり、受診者さんにバリウムや胃を膨らませる発泡剤を飲ませたり、検査後の注意事項を伝える。下剤を渡すのも忘れちゃいけない大事な仕事だ。

バリウムは大きな寸胴鍋のような機械に、素となる粉と水を入れて撹拌しながら作るのだが、固まりやすいため常に緊張しながらの作業を強いられる。

事務が担当する仕事の中でも、マーゲン介助は医療行為に近いため信頼のおける人にしかさせないらしく、選ばれたのは光栄だが未だに苦手意識があった。

「あはは、あんなの慣れだよ。胸部は車の中1人だし退屈だな」
「ふふ、今日は初日ですし受診者さん多いみたいですよ?きっと退屈なんて言ってられないです」

受付の机で笑いながら間宮さんと話していると、コツコツと革靴で床を鳴らしながら近付いてくる男性。

「瀬尾さん、ちょっといいかな?」

私より30センチは高いであろう長身。スーツのジャケットを脱いで白衣を纏っている上からでも均整の取れた体躯は微塵の隙もないのが伺える。