小さな3階建てマンションの前に赤いスポーツカーが停まる。
平日のお昼過ぎ。人通りはそれほど多くないけど、場違いな車は周囲の視線を集めそうでそわそわする。
今日は九条先生がクマ先生の代理で入ってくれる最後の日。もう現場で先生に会うことはない。
そう考えたら、すぐに車から降りることが出来なかった。
どうしよう。
私、九条先生が好きだ…。
彼の言動全てに心を動かされ、いつのまにか囚われてしまっている。
出会って間もないのに、こうして一緒に過ごす時間の中で苦しいくらい胸が締め付けられる。
そんな人、今まで出会ったことがない。
「せんせい……」
小さく呼びかけると、九条先生の手が私の頬に伸びてくる。
ドキッとして首を竦めると「怖い?」と聞かれた。
先程の間宮さんとのやり取りを気にしているのだと分かり、私は大きく首を振った。
「怖くないです!さっきは…、間宮さんのいきなりの行動に驚いて、怖くなっちゃったけど…。九条先生なら、怖くない…です」
私の返答に、先生は目を見張った。



