甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


「はい。責任をもって家まで送ります」
「待って、でも撤収…」
「平気だよ。設営より楽だし」

朱音ちゃんは大丈夫だと言ってくれるけど、そもそも私は具合が悪いわけじゃない。ちょっと驚いて力が入らなかっただけで、今はもう何ともないのに。

私を差し置いて、先生と朱音ちゃんがどんどん話を進めてしまう。

「おいで」

結局先生の車で帰ることになってしまった私は、来客用駐車場に停められている赤いスポーツカーの前に立ち尽くしている。

助手席には大好きなウニがいるけど、はしゃぐ気にはなれなかった。

「乗って」
「先生…」

先生はウニを私に渡すと、そのまま乗るように促す。
混乱してぐちゃぐちゃの頭では何も考えられず、私は流されるように車に乗り込んだ。


「…ごめん。強引に早退させて」

走り出した車の中で、ようやく先生が口を開いた。

私は何を言ったらいいのかわからず、ウニをぎゅっと抱きしめたまま、ただ首を横に振った。

それからも車内は無言のまま。1度最寄り駅に近くなった頃に路肩に停めて住所を聞かれた。

駅までで大丈夫だと告げても、現場責任者である朱音ちゃんに家まで届けると約束したからと譲らず、結局ナビに私の住所を入力した。