甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


エレベーターでもう1度下ろしてほしいと懇願し、ようやく解放してもらえたけど、さっきとは違う意味で力が入らずにふらついてしまう。

先生は私の前に跪くと、靴を履くのを手伝ってくれた。

その間も、九条先生はひとことも喋らなかった。

眉間に皺を寄せた険しい顔は見たことのない表情で、私もそれ以上話しかけることは出来なかった。


「遥ちゃん、ごめんね!私付箋貼り忘れちゃって」
「う、うん…」

会場となった会議室ではすでに撤収作業が始められていた。
私と九条先生に気付いた朱音ちゃんが、パーテーションのカーテンを畳む手を止めて駆け寄ってくる。

「どうしたの?なんか顔色悪い」

朱音ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「ううん、なんでも」
「瀬尾さん、具合悪いらしくて。今日はもう俺が送って帰って大丈夫ですか?」

心配させまいと笑顔を作った私の言葉を遮り、九条先生が朱音ちゃんに提案する。

「え?!」
「やだ、大丈夫?九条先生、お任せしても良いんですか?」

降って湧いた話についていけず、私を労るように背中に手を添える先生を見上げた。