甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


そんな様子を見て、九条先生は車前に置いていた私の靴を指に引っ掛けて持つと、背中と膝裏に手を入れて軽々と抱き上げた。

「ひゃっ、待って先生、自分で歩けます…!」
「ここはお願いします」

私の抗議をさらりと無視した先生が間宮さんを一瞥してそう指示を出すと、俯いたままの彼は小さく頷いた。その姿に胸が痛くなる。

好意を寄せてもらっていたなんて、まったく気が付かなかった。
誰にでもフレンドリーに話していたし、自分が特別だなんて思ってもみなかった。

申し訳ない気持ちと、先程までの恐怖や嫌悪感といった感情がごちゃごちゃで、それ以上考えることが出来なかった。

なのに今、私は九条先生にお姫様抱っこされて、苦しいほどにドキドキしている。

間宮さんに近付かれた時には戸惑いや恐怖しかなかったのに、こうして身体を密着させて抱き上げられても、恥ずかしくはあるが嫌だとは思わない。

もう答えは明確に出ていて、私は九条先生の白衣の胸元にこっそり頬を寄せた。


レントゲン車を降りた先生は、私を抱えたままエレベーターで7階まで上がる。

エントランスでは恥ずかしすぎて、ぎゅっと目を閉じ耳を塞いでいた。どれだけの人の視線に晒されているのか想像するのも恐ろしい。