甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


いつの間にか肩をソファに抑えられ、ゆっくりと近付いてくる顔に、どうしようもなく嫌悪感が湧く。

間宮さんのことは嫌いではない。むしろ技師さんとして頼りにしている。
だけど恋愛対象としてみたことはなく、こんな風に密室の車内で力ずくで迫られたら怖くて仕方ない。

そんな私の気持ちなどお構いなしに顔が近付いてきて、恐怖に涙が滲む。

「まって…!やめてくださ…」
「何をしている?!」

顔を背けて腕を突っ張り何とか離れてもらおうと大声で叫ぶと、ここに居るはずのない人の不機嫌そうな声が響く。

九条先生の突然の登場に驚いた間宮さんは、一瞬呆けた後、慌てて私の上から飛び退いた。

「あ…いや、これは…」
「間宮さん、中原さんが受診票に付箋を貼り忘れたらしい。今日はこれで終わりだ」

先生が説明している間に私も身体を起こそうと力を入れるけど、なぜか手足が震えて力が入らない。

「……あ、」

そんな私の様子にバツが悪そうに「ごめん…、瀬尾さん」と正気に戻ったらしい間宮さんが謝ってくれるけど、どうしてもソファから立ち上がれなかった。