困惑しながら彼を見ると、「朝聞きそびれちゃったから」と微笑んだ。
「彼氏は?いる?」
「…あの、いませんが」
「俺、どう?立候補してもいい?」
ただでさえ近い距離をさらに詰められて、思わず後ろに身を引く。
すると幅が狭いソファの端に手をついていたせいで滑ってしまい、後方に身体が倒れてしまう。
「ずっと瀬尾さんのこと気になってたんだ。一生懸命でいい子だなって。俺のこと、考えてみてくれないかな」
ソファに膝を付き、私の上に乗りかかるような体勢で口説かれても、戸惑いより恐怖が勝る。
「あの、受診者さんが来たら大変なので、一旦…」
この体勢をなんとかしてほしい。そう震える声で懇願する。
さすがに仕事中に何かされるとは思わないけど、それでもやっぱりマウントを取られたような姿勢は本能的に恐怖心を煽る。
間宮さんは細身とはいえ長身の男性で、私は女性の平均身長すらない小柄で痩せっぽっちな体型。
何かあったときに絶対的不利な体勢に拒否反応が出る。
「俺の気持ち、気付いてなかった?」
「すみません、あの…」
「瀬尾さん…」



