九条先生ととても親しそうなやり取りをしている。『悠くん』って、なんだか可愛くて微笑ましい。きっとこのお店の常連さんなんだろうな。
それにしてもこの店長さん…、何だか、どことなく見たことのある佇まいな気が…。
「3年ぶりくらいですかね。先月末に帰国しました」
「それでもう女の子連れてんのか。イケメンはいいなぁ」
急に私に話が向けられて、思わず固まってしまう。
「俺が今臨時で健診に出てるとこのバイトさんです。昼休憩なんですよ」
「なんだぁ、そっか」
「それと、彼女は熊澤先生のお気に入りです」
「え?」
急にクマ先生の名前が出てきたことに驚く。クマ先生もこのお店の常連さんだったりするんだろうか。
「兄貴の?」
「……兄貴?!」
興味深そうに私を見る店主の言葉に、店内にそぐわない程大きな声で驚いてしまった。
「ごめん、驚かせたね。とりあえず注文しようか。おすすめの中華そばでいい?」
「は、はい…」
クスクス笑いながら2人分の中華そばを注文をしてくれた九条先生の隣で、大声を出してしまい恥ずかしくなった私は小さくなって水を飲んだ。
確かに言われてみれば体格の良さも、くりっとした瞳もクマ先生に似ている。2人が並べば誰が見ても兄弟だと思うに違いない。



