結局断る理由もなくて、私は九条先生と一緒に12階まで上がり、社食でお昼ごはんを食べた。
名取フーズの最上階にある社員食堂は、とても広々していて明るい雰囲気。
テーブル席やカウンター席、大きな円形のテーブルやソファ席なんかも配置されていて、社員がゆっくり寛げる空間になっていた。
お昼時とあって結構な人数が利用していた。その中でも九条先生は一際目を引いている。
特に女性社員の『あれ誰?!』みたいな視線をビシビシ感じる。白衣を着ているせいでなおさらだと思う。
「脱いでくればよかったな」と苦笑していたので、きっと先生も注目されているのに気付いているんだろう。
企画部部長の早見さんおすすめだけあってどれも美味しそうで、シンプルなうどんやカレーはもちろん、日替わり定食や健康に配慮されたヘルシーそうなワンプレートなど、名取フーズの企画商品課の方が考えたという色んな種類のメニューがある。
九条先生はとても綺麗に食事をするのに食べるスピードが異常に早くて驚いていると「職業病かな」と苦笑した。
「一緒に食べに来てるんだから同じペースにするべきなのに、白衣を着てるとつい…。ごめんね、気が利かなくて」
「いえ!私の方こそ食べるの遅くてすみません」
「いいよ、ゆっくり食べて。美味しそうに食べてる瀬尾さん見てれば退屈しなさそうだから」
そんなことを言われてしまうと、じっと見られている気がして食べにくい。せっかくとても美味しいのに、味がわからなくなってしまいそう。
白身魚のフライから目線を上げて九条先生を上目遣いに見ると、頬杖をついてこちらを眺めていた。



