甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


九条先生と2人取り残された私は、改めて先程のお礼をした。
あまり思い出したくない恥ずかしい出来事だけど、ちゃんと謝意は伝えなくては。

「さっきは本当にありがとうございました。九条先生がいてくださらなかったら、きっと早見さん帰っちゃってました」

ぺこりと頭を下げると、ピカピカに磨かれた茶色い革靴が目に入る。贅沢に縁のない私でも、靴もスーツも高級なものだというのがわかるほど質が良さそう。

それが嫌味じゃなく似合うのだから九条先生は凄い。

「いや、瀬尾さんの熱心な説得のおかげだよ」
「そんな…」

あれを説得と呼べるのかどうか。思い出しただけでも頬が熱くなる。

「問診を俺が担当したんだけど、君に申し訳ないって言ってたよ」
「あ、ご本人からも言っていただきました。それにここの社食のチケットまで頂いて。私本当に名取フーズの冷食好きなので、お昼行くの楽しみなんです」
「へぇ、よっぽど好きなんだね」

あ、そうか。
こんなに高級そうなスーツや靴を身につけるお医者さんの九条先生には、冷凍食品を食べる機会がないのかも。

外で食べるか、しっかり手料理を作って支えてくれる女性がいるんだろうな。