甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


「あ、九条先生!」

朱音ちゃんがホッとした様子で先生を見上げて声を掛けた。

「お疲れさまです。先程はありがとうございました」
「いえ。無事に皆さんに受けてもらえて良かったです」

朱音ちゃんだけでなく、私にも視線を向けながら話すその声は、うっとりするほど耳に心地いい。

天は二物を与えずということわざがあるけれど、この先生は根底から覆してしまっている。

俳優顔負けの整った顔立ちに素敵な声。おまけに海外留学できる医師としての優秀さもあるらしい。

まだ今日会ったばかりだけど、荷物を持ってくれたり庇ってくれたり、性格まで優しそうだし。

私の人生でこんなにパーフェクトな人に出会ったのは初めてだ。

そんなことを考えている私をよそに、朱音ちゃんが九条先生に説明する。

「ちょっと言い忘れてしまったことがありまして」
「なんでしょう?」
「お昼休憩なんですが、最後の受診者のマーゲンが終わるまで少しだけ待って頂けますか?」

それだけで、九条先生は理解したらしく何度か小さく頷いた。

「もちろん。そのつもりでした」
「ありがとうございます。下の車から彼女に連絡が入るはずなので。その分、お昼は少しゆっくり戻ってきてもらって構いませんから」

朱音ちゃんはそれだけ言うと、お昼休憩中に済ませたい用事があるらしく、慌ただしく出ていった。