甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


悲痛な面持ちの彼は、私の目を真っ直ぐに見て縋るように告げてくる。そんな悠さんを見て、私も全部気持ちをぶつけてみようと思った。

「…あの日、マンションのエントランスで佐々木さんと会って…、お見合いのこともお父さんのことも、悠さんのことを何も知らなかったことがショックだった。きっと私のためを思って話さなかったんだって頭で考えても、居ても立ってもいられなくて…、悠さんに早く会いたくて病院に迎えに行ったの」

そして、売店で勤務を終えたであろう看護師さんらしき人たちの会話を聞いたんだ。

結婚するんですかという彼女に質問に対し、悠さんが『内緒ね』と意味深に答えたというあの話を…。

そう話し終えて悠さんの顔を見上げると、彼は少し思案したあと口を開いた。

「『結婚するんですか』なんて、看護師にも他の同僚にも聞かれたことないな。万が一聞かれたとしても、そんな『内緒』だなんて曖昧な言い方はしない」
「そんな…。でも確かに『先生を追いかけて聞いた』って。あの人がわざわざ嘘なんてつく理由もないし…」
「待って。その噂話をしていた人は『先生』に聞いたって言ってたの?」
「え…?は、はい」

何度思い出しても、あの女性が『先生に聞いた』と言っていた。
肯定して頷くと、悠さんは不愉快そうに眉間に皺を寄せて大きなため息を吐いた。

「その『先生』って、たぶん俺じゃなくあっちに聞いたんじゃないかな」
「あっち?……え、あ!」