「まさか。適当にあしらって、父には傘下の病院には就職させないよう耳打ちしておいた。優秀な医者ならともかく、彼女はそうじゃない。それに、遥を不安にさせるような真似はしたくない」
「悠さん…」
私はその言葉を信じていいんだろうか。
ずっと悠さんを信じたかった。
こんなにも私を甘やかし、愛おしそうに見つめてくれる悠さんが、私を裏切っているだなんて思いたくなかった。
でも、以前付き合っていたという佐々木さんを実際に目の当たりにして、本当に自分が彼の隣りにいていいのだろうかと不安になってしまった。
悠さんはかっこよくて気遣いに溢れた優しい人で、病気に苦しむ人をたくさん助けられる海外留学までした優秀なお医者さん。
片や私は身よりもすでになく、大学を中退したただのフリーター。
特に秀でた容姿もずば抜けた才能を持っているわけでもない。
そんな私よりも、あの人が言うように容姿端麗で同じ医者で支え会える人が隣にいた方が、彼にとっては幸せなんじゃないか。
そんな風に考えだしたら、どうしても自信がなくなってしまった。
ぐるぐると巡る葛藤に心を苛まれていると、悠さんが心配げに私の顔を覗き込む。
「遥。他には?不安になってること、嫌な気持ちになったこと、全部教えて。誤解なら解きたいし、俺に否があるなら謝りたい」



