甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


「嫌な思いをさせてごめん」
「……悠さん?」
「さっきも言ったけど、父親の職業以外はすべて虚言だよ。彼女と結婚だなんて話は1度も出たことがない。ただ、病院に押しかけられて1度だけ顔を合わせたのは事実だ。黙っていてごめん」
「押しかけられた…?」

抱き寄せられて悠さんの胸の中におさまったまま、私はそっと彼を見上げる。
さっきは気が付かなかったけど、少し顔色が悪い。
仕事は比較的落ち着いていると言っていたけど、それでもやはり忙しいんだろう。ちゃんとご飯を食べて眠れているのか、話とは全然関係ないことを考えて心配になってしまった。

「俺の後に付き合ってた医者がどうやら医療ミスで患者から訴えられているらしくてね。今働いてる病院の御曹司らしくて、縁を切りたいから俺の父親の伝手で一橋病院で働かせてほしいと言ってきたんだ」

父親の伝手…。
そうか、悠さんのお父さんは健康推進会の理事長。その傘下である一橋病院なら、彼に頼めば以前働いていたこともあって簡単に再就職が可能なのかも知れない。

「じゃあ、また佐々木さんと同じ職場に…?」

反射的に嫌だと感じてしまう自分が恥ずかしくて、咄嗟に顔を見られたくないと俯いた。
仕事ならば仕方がないことだと思うのに、子供じみた自分勝手な感情が湧き上がる。

そんな私の心の内を見抜いたように、悠さんはぎゅっと抱き寄せた腕に力を込めた。