甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


「遥」
「で、でも!病院でも悠さんが彼女のためにお見合い断ったとか噂になってたのを聞いて」
「それはもちろん、俺には遥がいるから断ったよ」

至極当然という顔で頷かれるのに拍子抜けしそうになるが、その彼女というのは佐々木さんではと噂されていた。

怪訝な表情を浮かべる私を見て、「一体誰に何を聞いたの?」とゆっくりと問いかける悠さん。
その優しげな表情に、私の強張っていた身体から少しずつ力が抜けていく。

「でも…佐々木さんと病院で2人で会ってますよね?噂も、ご本人からも聞きました」
「本人って、佐々木先生?会ったの?」
「土曜日、悠さんのマンションに来てて…」

佐々木さんがマンションに来て私に会っていたというのを聞くと、今までの優しげな表情から一変、険しい顔つきになる。

「彼女に何を言われた?」

あまり思い出したくもないけれど、私は悠さんにとってただの家事手伝いにしか思われてなくて彼女が結婚相手だということ、悠さんはお父さんの後を継いで医学界のトップに立つ人間だということ、それに相応しい相手と結婚しなくてはならないということなど、彼女が言っていたままの言葉で伝える。

「…よくもそんな自分に都合のいい話に……」

悠さんは肩を大きく上下させながら深いため息を吐くと、そっと私を自分の方へ抱き寄せた。
以前と変わらぬ彼の体温に安心してしまい、そのままいつものように体重を預けて寄りかかる。