甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


「健康だと感じていても、そうじゃない場合を見逃さないようにするのがこの健康診断です。お時間を頂いて申し訳ないとは思っていますが、どうか…」
「こっちは仕事をしに会社に来てるんだよ。無駄な時間はないんだ」

健診が始まって15分程。検査はスムーズに流れているし、正直そこまでまた待たせているとは思えない。

それでも忙しい合間を縫って受診しにきてくれた社員さんの意見も分かる。私はなんとか言葉を続けた。

「おっしゃるとおりです。私どもも、精一杯お待たせしないように努めますので」
「でもねぇ、結局こうやって長い時間待たされてるわけだから」
「それに!私、名取フーズさんの冷凍食品にとてもお世話になっているんです。お弁当作るときとか大活躍で!美味しい商品を生み出す皆さんの健康を守るのが、私達の仕事なんです」
「君……」

今まで勢いのあった男性が一瞬言葉に詰まる。
そこで私はやっと場違いな発言をしてしまったと我に返った。

いくら健康診断を受けてほしいとはいえ、医師でも看護師でもない私が健康を守るだなんておこがましいし、今この会社の商品が好きかどうかは関係ない。

恥ずかしくなってこれ以上何も言えずに俯いて「…すみません」とだけ小さく謝る。すると、受付と反対の通路から声が掛かった。

「彼女の言う通りです」

私の後ろから聞こえたのは、九条先生の声。医師の問診の部屋はこの会議室の隣に個室で作っている。揉めている声が聞こえて出てきてくれたんだろうか。