甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


人の話を聞かず、自分の思う通りにいかないと機嫌を損ねる。なにより親しくなればなるほど、医師として彼女を尊敬することが出来なかった。

患者に対して真摯な対応をとっているとは言えず、看護師や他に関わる作業療法士などに対する態度も、同じ医療従事者に対する敬意がまるで感じられない。

医者は神ではないし、偉くもない。
実質的に指示を出す立場ではあるものの、周りのサポートがなければ病に立ち向かうことは出来ない。

それを理解していない彼女とは、今後関わりたくないというのが本音だった。


『ねぇお願い。悠なら私をまたこの病院で働けるように口利きくらい出来るでしょう?』

出来なくはない。
だが、そんなことをする気はさらさらなかった。

彼女が優秀な医師であるならば一考の価値はあったものの現実は違う。それでなくても遥を不安にさせるような言動はしたくない。

俺は父に健康推進会の傘下である3つの病院に『佐々木麗子という医師を雇うのは勧めない』と耳打ちしておこうと密かに決め、彼女には『父に言っておくから、私用で病院に来るのはやめてくれ』と適当にあしらいつつも厳しく言い含め、連絡先を教えてほしいとしつこく迫るのを無視して仕事に戻った。