甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


朱音ちゃんは並んでいる受診者の受付をしている。そこが滞ってしまえば、時間内に健診を終わらせられないため手を止めるわけにはいかず、クレームを入れている男性社員のフォローに回れそうにない。

他の看護さんや検査さんも、あまりの剣幕に説得に時間が掛かりそうだと判断し、自分の持ち場を離れると健診が滞ってしまうだろうと二の足を踏んでいる状態だった。

今日の私のポジションは会場の導線誘導。しばらく手は空いているので、私が行くのが最適だと進み出た。

大きな声の40代くらいの男性のもとへ行き、「申し訳ありませんが」と声を掛けた。

「病院や医療施設と違う会場で不備なく健診をするために、こうして皆様同じ順路でお願いをしています。お待たせして申し訳ありません」

なるべく丁寧に接して理解してもらおうと頭を下げたけど、どうしても納得はしてもらえなかった。
そりゃ受診者さんにとったら、こちらの結果処理の効率なんて知ったことでなないだろう。

うまく説得できずに困っていると、手にしていた受診票を私に押し付けてきた。

「じゃあキャンセルしといてよ。どっこも身体に悪いところなんてないのに忙しい中やってられないよ」
「待って下さい!」

それはダメ。健康診断は絶対に受けるべきもの。それだけは譲れない。
会場から出ていこうとする男性社員に、私は必死に追い縋った。