甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています


クマ先生のご厚意に甘え代理の先生をお願いし、今日やって来たのが目の前の見目麗しい九条先生。
朝のスーツ姿もかっこよかったけど、白衣姿は3割増しで素敵だった。

「えっと、受診票ですか?」

勝手にドキドキしてしまう胸を押さえ、気付かれないようにへらっと笑顔を作ると、目を細めた九条先生が何か探るような視線を向ける。

「…邪魔したかな?」
「え?」

設営はもう終わっているし、代打で来てくれた先生に説明をするのは私達事務の仕事のうちだ。
邪魔なんてとんでもない。

そう伝えると一瞬変な間があいた後、「そっか、ならいいんだ」と可笑しそうに肩を竦めて笑った。
小さく笑ったその笑顔にも、つい無意識に胸がときめいてしまう。美しい男性って罪だ…。

気を取り直して受付の机に受診票のサンプルを広げ、先生が不明に思う箇所を説明していく。

1枚の紙を2人で覗き込むという体勢は、思いの外距離が近い。
九条先生が話す度に、私の顔周りの髪の毛が揺れるのがくすぐったくて、自分の右側半分に意識が集中する。


―――近い。近すぎる……!

受診票のチェックボックスや既往歴の書き方の説明をしていた私の身体はガチガチに固まってしまう。

パチパチと瞬きを繰り返し硬直していると、右側からくすりと笑う声がする。

「ありがとう、理解した」
「…それは、なによりです」

おかしな返答だったのがツボに入ったのか、今度は声を上げて笑う九条先生。
初日から挙動不審でとんでもない醜態を晒してしまったと、私はがっくりと肩を落とした。