35cmの音

「...私さ、サナが羨ましかったんだ」

「私が?」

「親いないし、貧乏のくせに頭良いし、
いつも先生に褒められて、かっ、可愛いし、
学校でいじめられてるくせにイケメンな
彼氏までいるし、実はおもろいしそれに...」

褒めてる?けなしてる?

「えーまだある?」

「ぼっちのくせに堂々としてるしさ。
とにかく、アンタが羨ましかった!」

「別に、人が羨むほどの物なんて何も持ってないよ私。」

今は家族も友達いないし、
なんなら玲音だって彼氏でもないし。

「それでも幸せそうだったのが、ずっと悔しくて羨ましかった」

「そっか、」

ユナは母子家庭で育ったんだっけ。

「アンタ昔から頭良いくせにこんなアホ高いるし何なの。」
「あーそれは公立のほうが安かったし」

おばぁちゃんの病院の近くだからって理由だけど

「まじで惨めになったんだからね私」

知らないうちにユナのこと傷つけてたんだね。

「ごめん」

なんか、

わだかまりが溶けて

「あやまるな」

今までのことなんかどうでも良くなった