35cmの音

病院の帰り道。

最愛の人を、たった一人の
家族を亡くしたばかりなのに

「...呆気な。」

私は思った以上に落ち着いていた。

涙も出なかった。

むしろ、

いつもより清々しい気持ちだった。

それは多分、

生きることを放棄したから。

もう学校に行かなくていい

働かなくていい
頑張らなくていい
良い子でいなくていい

むしろ私には


“生きていく理由”


のほうがなかった。