「【母】がそうでしたから。」
「・・・・・・・お母様・・?」
「僕の母は【神社・仏閣巡り】を趣味としていました。
滅多に休暇は取れないようでしたが、そんな中でも僕も毎回、母と一緒に訪れました。」
「・・・・・・・・・・・・。」
阿部先生のお母さん・・。
触りというか・・近況は知っているが・・
その詳細を・・この男の素性を知ったのはこれが初めてだった。
「僕の母は物理を専攻にしていた科学者でした。
だから物心ついた僕の周りには、オモチャよりも実験道具が溢れていました。
母は、僕を産んだ後も“育児”と“研究”という二足のわらじを履いて、
科学の未来へ情熱を賭けていた。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「ですが・・
父はそれを良く思っていなかった。
昭和気質の古い考えの人でしたから。
【女は家庭に入れ】
【全ての家事・炊事は女がやるべき事】
【子供を保育園に預けるなんて母親失格だ】
父と母の対立は深くなる一方で、
結局、僕が小学校に上がる前に離婚して、
親権争いも泥沼化していましたが、
結局[稼ぎが少なく不安定で、
且つ不規則な生活を余儀なくされる“研究者”という職の母に、子供を育てるのは無理]
という結論になって、
僕は父に引き取られ、
“父子家庭”で育ちました。」
「・・・・・・・・・・・。」
「母に会えるのは数ヶ月に1回、
たまに取れた休暇。
その時は遊園地に行くのではなく、
いつも一緒に仏閣巡りをしました。」



