「ご、ごめんまた急に叫んじゃって。
オレ、あんまり下の名前知られたくなくて……」

「…何で?」

「何でって…"千花"って女子みたいな名前じゃん!!
見た目も皆と比べると幼い方だし、身長もそこまで高くないし…嫌なんだよ、自分の名前…」

「ふーん」


確かに速水くんって可愛らしい見た目をしている。

わんこ系って感じで年上の女の子に人気ありそう。

それに背だって170センチ以上はありそうだし、普通に高い方では?


「私は"千花"って名前、男の子でも良いと思うけどなぁ…」


独り言のように呟くと速水くんが驚いた顔で「えっ…」と声を漏らす。


「良いって何が……」

「知ってる?"千"って書く名前はね、『沢山の幸せが訪れますように』っていう意味が込められてるんだって!私その意味知った時、素敵だなぁって……綺麗な響きで速水くんにぴったりじゃん?」

「っ…」

「皆は"かわいい"って印象かもしれないけど、私は寧ろ"かっこいい"って思ったよ!」


速水くんも何かのきっかけで自分の名前好きになってくれたらいいんだけど…


「かっこよくて綺麗な名前とか最強じゃん!
もっと自信持っていいと思うよ?」


笑顔でそう言うと速水くんの目から滝のように涙が流れ出てきた。