「にわとりのモノマネするならせめてカルガモがよかった…」
「え、そっち!?」
「オレ、小学生の時、飼育委員でにわとりの世話してたんだけど、当時めちゃくちゃ凶暴なにわとりに追いかけ回された記憶があって、それで軽いトラウマになっちゃって……」
「えっ…なんかごめん…」
「いや、大丈夫。にわとりは苦手だけど鶏肉は好きなんだよね…」
うわぁ、なんだか複雑な気持ちになるなぁ…
「ところで速水くん、先生が寝てないで課題終わらせろってさ!」
「おっけー!ありが──…わー!?オレ、1問しか解いてない!!」
表情がコロコロ変わる速水くんになんだか笑みが溢れそうになる。
「それじゃあ、私帰るね!」
「うん!起こしてくれてありがと〜!───…って美緒ちゃんやっぱ待って!!」
男の子に下の名前で初めて呼ばれたと同時に速水くんが腕を掴んできて思わずビクッと体が反応する。
「どどどどうしたの!?」
そう聞くと速水くんは申し訳なさそうに眉を下げ、
「…1問だけでいいから勉強教えてほしいなぁって…」
「えー、でも私あんまり勉強できないよ?」
「それでもいいから!お願い!」
速水くんは顔の前に両手を合わせ、「お願いします!」ともう一度頼んでくる。
初めて人に頼られて満更でもない私は
「仕方ないなぁ〜」
と答えて彼に勉強を教えてあげた。


