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担任から頼まれた雑用を片付け、鞄を取りに行くために教室へ戻る。

教室に向かっている中、周りに人がいないことを確認してから舌打ちをする。


あの担任、毎度俺にばっかパシリやがって…

もっと暇そうな奴に頼めや!!!


兄貴のように振る舞おうと心に決め、本性を隠し、

人との距離を一定的に保つようになってからは人付き合いとかは楽になったし、兄貴と比べられることもなくなった。

だが、逆に雑用を頼まれることが増えた気がする。

まあ、別にいいけど。
ただ俺の評価が上がるだけだし。

有能であり、優秀な生徒と思われるのは悪い気がしないから。


教室の扉を開けると中に知らない女子生徒がいる。

女子生徒は俺に気づき、「あっ!王子!」と嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる。

誰だこいつ…と思いながら深森の姿を探す。

見渡すと目の前にいる女と俺しか教室には残っておらず、先に帰った深森に怒りが込み上げそうになった。


「あの、あたし…今日の朝下駄箱に手紙入れたんだけど……」


頬を赤く染め、恥ずかしそうにしながら話し始める。


「あー、うん。覚えてるよ」


なんて笑顔で言ったが、毎日女子たちから手紙や贈り物を貰っているため、どれが誰なのか正直把握していない。

しかも名前を書かない奴もいるから余計ごちゃごちゃになる。